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長崎地方裁判所佐世保支部 昭和29年(モ)149号 判決 1954年7月23日

申請人 山村次義

被申請人 潜龍礦労働組合

主文

当裁判所が申請人、被申請人間の昭和二十九年(ヨ)第五〇号仮の地位を定むる仮処分申請事件につき、昭和二十九年五月二十五日に為した仮処分決定は之を取消す。

申請人の本件仮処分申請は之を却下する。

訴訟費用は申請人の負担とする。

この判決は第一項に限り仮りに執行することができる。

事実

申請人代理人は、主文第一項掲記の仮処分決定はこれを認可する、訴訟費用は被申請人の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として、被申請人は訴外住友石炭鉱業株式会社潜龍礦業所の礦員をもつて組織された労働組合であり、申請人は同礦業所礦員でその組合員である。

被申請人は申請人が被申請人組合規約第八十三条第二号及び第三号の組合の統制秩序を紊しその名誉を毀損したものに該当するとして昭和二十九年五月二十三日同組合の大会において申請人に対する除名決議をなしたが、その除名理由として挙げられたのは主として次のごときものであつた。

即ち潜龍炭坑の第三水平左一号払の責任である申請人が同上右一号払責任の訴外松尾貞記と共に昭和二十九年三月十四日夕刻前記会社職員で同礦業所礦務係長訴外辻田喜美方に遊びに行きその席に来合せた礦務課長訴外川副官次も居る前で自己の責任下にある払配下数名の人物批評をし、その結果申請人配下の訴外川口寿康は同月二十九日に、同訴外林田常義は同月三十日に何れも前記訴外松尾が責任である同払に移動せしめられたが、右は同志を売る行為であつて前記組合規約の統制条項に該当すると言ふのである。

然し乍ら申請人は右事件当日は採炭小委員会があつて焼酎をコップに二杯位飮み、更に同委員会終了後前記松尾と共に「ひぐれ食堂」において焼酎を飮んでいる間に松尾が「自分の責任はつらい」としきりにこぼすので申請人は「飮む時には仕事のことなど話すな」と止めたけれども尚そのことを繰り返すので申請人も「それでは上司のものに話せばよいではないか」と言つたところ、松尾が「辻田係長のところに行こう」と言ふので結局申請人は同所で更に焼酎四合許りを飮んだ上二人で辻田宅に行き、同所には川副課長も来合せたが、その席で松尾と二人で共に自分達責任の働き易いようにして欲しいと希望を述べただけのことであり、而も申請人は酩酊の為右辻田宅に立寄つたことすらよく覚へず、課長に会つたことなどもはつきりしないので、勿論そのときに如何なることを口走つたか全く記憶しないのである。かりにその席上配下の人物批評をしたからと言つても払配下の人員移動は副主任及び現場係員が行ふのであつて礦務係長は単に事後報告を受けるにとどまつて之には関与せず林田、川口両名の移動と前記申請人の人物批評とは何の関連性もなく単なる偶然の一致と称すべきである。又醉余配下の人物批評をすることは誰しもありがちのことであり、又固より会社職員との交際が禁じられている訳でもないので右の行為が特に組合の統制秩序を紊すものとは言へず、勿論その名誉を毀損したものでないこと明かである。従つて申請人の行為は前記組合規約第八十三条第二、第三各号に該当しないので之を理由に申請人を除名した前記大会決議は無効と言ふべきである。よつて申請人は昭和二十九年五月二十六日当裁判所に対し前記組合大会決議無効確認の訴を提起した。

然し乍ら被申請人組合と前記会社間には所謂ユニオン・ショップ約款があつて両者間の労働協約第十一条には「会社は組合から除名された礦員は原則として解雇する」旨が定められて居るので前記の如く除名された申請人は解雇の危険に直面している訳で著しい損害を受ける虞れがあるので之を避ける為本申立に及んだと述べ、

被申請人の答弁に対して、ユニオン・ショップ制の下における除名は被除名者の生存権を脅かすものであるからその除名は客観的に妥当性のあるものでなければならないが被申請人の挙げている除名理由は抽象的であつて前記申請人の陳述事項以外に何等見るべきものはない。大体申請人は昭和十三年三月十八日より潜龍礦業所に勤務して今日に到つて居り或いは被申請人組合の言ふが如く幾分封建思想が抜け切らず自分を雇つている会社を敵視することは不可能かも知れないが、さればと言つて自己の属する組合の統制を紊したりその名誉を毀損したりしたことはないのであつて本件除名処分は正に客観的妥当性を欠く不法のものと言はねばならないと述べた。(疎明省略)

被申請人代理人は主文第一、二項同旨の判決を求め、答弁として、被申請人は訴外住友石炭鉱業株式会社の礦員を以て組織されている労働組合であり、申請人は同礦業所の礦員で、昭和二十九年五月二十三日被申請人組合の大会において除名される迄その組合員であつたこと、被申請人組合と右会社間には申請人主張の如きユニオン・ショップ約款が存することは何れもこれを認めるが次に述べる如く本件仮処分申請はその理由乃至必要性を欠く不当なものである。

即ち申請人は組合除名により会社から解雇される虞れのあることをもつて本件仮処分申請の理由としているが、訴外会社が解雇するか否かは本件仮処分の有無に関係のないことであつて単に解雇されるかも知れないといふ程度のことは仮処分の理由となり得ず、この趣旨は昭和二十六年一月三十日の最高裁判所第三小法廷の判決にも表れているところである。よつて申請人はその相手方を誤つたものといふべきである。

かりに被申請人を相手方としてかかる仮処分を求め得るとしても既に昭和二十九年五月二十七日付をもつて潜龍礦業所長から被申請人組合に対して「申請人から裁判所に提訴したる旨の申出があつたので裁判所で結論の出る迄解雇を留保し度い」と通知して来ているから申請人が本件仮処分申請の理由としている解雇されるかも知れないといふ緊急性は既に消滅したものといふべく、この点においてもその理由を欠くものである。

以上の主張が何れも理由なしとしても被申請人組合が申請人を除名したのは単に申請人が陳述するような行為のみによつてではなく、以下述べる如く充分理由あつてのことである。

即ち被申請人組合は昭和二十八年春以来上部団体である日本炭礦労働組合通称炭労の行動方針に従い各職場の労働強化反対及び職場民主化闘争を推し進めていたが、申請人が責任となつている第三水平左一号払においても職場委員を中心として右闘争に参加していた。而して昭和二十八年十月以降賃金闘争に際しては炭労中闘指令第二十九号の完全実施に被申請人組合は全力を傾注して闘つて来た。然るに前記払においては払責任である申請人の独断によつて右職場闘争を阻害するが如き言動があり賃金闘争に際しては払構成員の意思を抑へて組合の統一行動を阻害することが多く、この間同払において申請人の右のような反組合的行動に反対し組合の方針に従つて之を推進しようとしていた熱心な代議員、職場委員及び組合員は何等合理的な理由もなく配置転換させられ、この間昭和二十九年三月十四日夕刻訴外辻田礦務係長宅において訴外川副礦務課長列席の上、申請人の払における職場闘争問題に言及し同払構成員川口寿康、同林田常義(両名は何れもこの後配置転換させられた)外三、四名を同払より移動せしむべき旨右課長、係長に要請し、併せて同席者の訴外松尾貞記が責任をしている払よりも熱心な代議員、闘争委員である訴外下薗勲を移動せしむべき旨の発言をした事実も判明した。以上の事実は明らかに組合の統制秩序を紊し、且つその名誉を毀損する行為であり、組合規約第八十三条第二号、第三号に該当するので該申請人組合では正規の手続を経て昭和二十九年五月二十三日第十五回組合員定期大会において申請人の除名を決議したのである。

よつて被申請人組合の本件除名処分は正当であり又その処分は決して苛酷なものとは言へないのみならず、除名権は組織体としての労働組合から必然的に生ずる根源的な権利であり、同時に憲法第十八条の団結権の保障によつて支へられているものであつて組合員を除名すべきか否かは団結権を侵害され又は侵害されようとした労働組合が一切の事情を考慮して自ら決定しなければならない。而して裁判所としては強行法規に反した違法な統制処分が為されたようなとき以外は単に処分が重すぎるといふがごときことを理由に無効の判定を為すべきではない。

以上の理由により本件仮処分決定の取消を求めると述べた。(疎明省略)

理由

被申請人は訴外住友石炭鉱業株式会社潜龍礦業所の礦員をもつて組織する労働組合であり、申請人は同礦業所礦員で昭和二十九年五月二十三日被申請人組合の大会決議により除名され、それ迄はその組合員であつたこと、右除名決議の手続については別に瑕疵が存しないこと、被申請人組合と右会社間には従業員たる礦員が除名により組合員の資格を失つた場合には使用者たる会社は原則として当該従業員たる礦員を解雇しなければならない旨のユニオン・ショップ協定が存することは何れも当事者間に争いない。

然るところ被申請人は右協定から発生すべき解雇の虞れを理由とする被申請人に対する組合員としての仮の地位を定める本件仮処分申請は其の要件とする必要性を欠き許されないものである、と主張するので先ずこの点について按ずるに、なる程被申請人を相手方とする本件仮処分が第三者たる訴外住友石炭鉱業株式会社を法律上拘束するものでないことは被申請人主張の通りであり、又既に解雇された後において組合に対して為された除名決議の効力停止を求める仮処分申請について其の主張の如き判例のあることも明らかであるが、既に除名に因る解雇といふ処置が会社によつてとられている場合に、その解雇者たる会社に対しては何等拘束力を有しない組合に対する仮処分をすることによつて或いは会社が解雇を取消すかも知れないといふ状態をもたらすことと、未だ解雇の処置がとられて居らずその除名処分の当否について会社が考慮している際に除名の効力を停止する仮処分を為すこととは仮令会社に対して拘束力を有しないといふ点では同じであつても、会社の判断及び事後の行為に対する影響力には格段の差があると認められるのみならず申請人に対し除名の効力を停止する仮処分をなすことにより尠くとも会社は組合の権利としての申請人解雇要求を受けなくなる訳であり、解雇の虞れが相当程度減少することはいふを俟たないところである。ただ右の如き解雇により生ずる損害は除名により直接発生するものでない為かかる場合は仮処分の必要性を欠くのではないかとの疑を生ずるが、本件の如きユニオン・ショップ約款の存する場合は除名即解雇であり、事実上は直接の損害と殆ど変りがないのみならず、更に除名処分により何時解雇されるかも知れないと言ふ不安、組合員としての地位を喪失したことによる苦痛等その精神的な面に与へる影響の深刻なものであることは容易に察知出来るところであるからかかる場合においても亦仮処分の必要性に毫も欠くるところなしと言はねばならぬ。

次に潜龍鉱業所々長より被申請人組合に対して被申請人主張の如き通告のあつたことは成立に争いのない乙第十一号証により認められるところであるが、右通告は単に会社側の一方的な通告であつて勿論何時変更せられるかも知れない。殊にユニオン・ショップ約款に基く組合からの解雇要求といふことをも併せ考へれば解雇されるかも知れないと言ふ緊急性は少しも消滅したものとは言えないし、又前記の如く申請人の精神面に与へる影響をも考へるとこの点の主張も理由がないと言ふべきである。

そこで本件仮処分の前提である除名処分の効力自体について考へて見ると、

本件除名は申請人の行為が被申請人組合規約第八十三条所定の処罰事由である「組合の統制秩序を紊しその名誉を毀損した」ものに該当するとして為されたものであることについては当事者間に争いがない。そこで先ず被申請人組合は申請人の如何なる行為をもつて右事項に該当するとしたかにつき考へると、第一に訴外辻田宅における申請人の言動(内容については争いあり)が挙げられていることについては当事者間に争いなく、更に第二、申請人が拘束八時間、休憩一時間の組合指令を守らなかつたこと、第三、申請人は責任者の地位を利用し組合運動を忠実に守るものを圧迫し配下のものを理由もなく配置転換せしめたこと、第四、申請人は会社職制に対し常に組合員の動向を知らせると共に会社より与へられた指示を実行しようと努力したこと、第五、申請人の辻田宅における発言を論議した被申請人組合の第百四回代議員会以後申請人は労働組合何するものぞ、会社が俺を守つているといふような態度を示して何等反省していないことの四項目が問題とされたことは証人黒田光雄の証言により真正に成立したものと認められる乙第八号証(山村次義統制処分答申書)及び弁論の全趣旨により明らかである。

ところで証人内川玉喜の証言により真正に成立したものと認められる乙第六号証(第十五回組合員定期大会議事録)によれば右事項中第五についてはそのような具体的事実なしとの組合員執行部黒田書記長の発言により組合員もその事実を問題にしなかつたこと、更に第三については第一の辻田宅における行動から、第四についてはその前段は第一の辻田宅における発言から、後段は第二の休憩一時間拘束八時間不遵守のことから夫々全般的に類推判断して述べられたものであることが認められる。

よつて第一及び第二の事実の有無及びそれが組合の統制秩序を紊しその名誉を毀損する行為に該当するかについて按ずるに、証人内川玉喜、蛯谷武弘の各証言によつて真正に成立したものと認められる乙第十二号証、第十四号証及び第十五号証並びに証人黒田光雄、蛯谷武弘の各証言によれば被申請人組合では昭和二十八年春以来労働強化反対闘争が始められ、同年十月以降は更に賃金闘争に入り、続いて被申請人組合の上部団体である日本炭礦労働組合通称炭労の昭和二十九年一月十九日付炭労中闘指令第二十九号により賃金要求貫徹を指標とする闘争の為全国一斉時限スト(拘束六時間)及び拘束時間厳守遵法闘争並びに原炭搬出拒否を夫々期日を定めて実施することとなり、その内拘束時間厳守遵法闘争については同年一月三十日、三十一日、二月三日、四日、十一日の各期日に拘束八時間厳守一斉一時間休憩により行ふことになり、被申請人組合では右の内一斉一時間休憩については昼食時間を完全に一時間とることとし、拘束八時間については坑内八時間を厳守する為に勤務時間終了の四十分前には必ず作業を中止することとして闘争に入り、更に同年二月七日付被申請人組合闘争委員長よりの賃金闘争動員計画に対する指示第一号、職場闘争に関する指示第二号を以て「二月九日より決戦段階に突入する為総員はあらゆる行動に備へて態勢を完備し職場民主化闘争を徹底的に行い団結の強化に努めること」を指示し前記スト期日以後も休憩一時間厳守を励行することにして被申請組合は会社に対して闘争状態に入つていた事実が認められる。

このような状勢の際において潜龍坑の第三水平左一号払の責任であり(このことについては当事者間に争いない)同組合内の職域協議会副会長であつた(このことは証人黒田光雄の証言により認められる)申請人が前記スト期日の当初において(一月三十日及び三十一日頃)二、三回に亘り休憩一時間を厳守せず約二十分乃至三十分程を短縮し、同様拘束八時間についても終業時前四十分に作業を中止することなく約十分乃至十五分の延引のあつたことが証人黒田光雄、大曲重夫及び同林田常義の各証言により認められ、更に証人松尾貞記、川副官次及び同辻田善夫の各証言を綜合すれば申請人は三月十四日採炭小委員会の後「ひぐれ食堂」において第三水平右一号払の責任である訴外松尾某と飮酒の際同人より責任としてつらいとの発言があつたのに対して「それなら上司のところに行けばよいではないか」と申請人から松尾にさそいかけ、やや躊躇する同人を伴つて訴外辻田礦務係長宅に到り、態々川副礦務課長も呼んで貰い、同所で共に飮酒し乍ら右係長、課長を前にして自己配下の林田、川口外数名の批評をし気の合はぬものを代へて欲しい、そうすれば自分の思ふ通りになるとその氏名をメモした上辻田係長にも写して置く様に要請した事実が認められる。ただ右辻田宅においては申請人も相当の酩酊状態にあつたことは認められるけれども未だ自己の行為についての認識を欠く程の状況にあつたものとは考へられない。

次に以上の行為が組合の統制秩序を紊しその名誉を毀損したものに該当するかの点については申請人の組合及び会社内における地位、右行為当時における前記組合対会社間の緊迫せる状況等を併せ考へるときその行為は組合の団結を紊し、組合の闘争態勢を阻害したものであつて、従て又団結を欠く組合として対外的な名誉をも毀損したもので当然右統制条項に該当するとみるのが相当である。ただ前記申請人の辻田宅における発言と爾後行はれた林田、川口の配置転換(このことについては当事者間に争いがない)との関連性については之を認めるに足る資料はないけれども問題は申請人の行為そのものであつて、爾後の結果には存しないのであるからこのことは右認定を左右するには足りない。

そこで右違反行為を処罰するに除名を以てすることが妥当であるかについて按ずるに、被申請人は組合の組合員に対する処分の種類、軽重については組合が自主的に之を決定すべきであつて裁判所は干渉すべきでないと主張している。組合の自主性についての右の所論は寔にその通りであるけれども、元来除名処分は組合員としての身分を奪ふ行為であり、殊に本件の如くユニオン・ショップ約款の存する場合における組合員の除名はこれによつて従業員としての地位をも喪失せしめ、該組合員の生活権を根底よりゆるがすものであり実に憲法に保障する基本的人権にもつながる重大なる処分であるから、それが司法審査の対象となることはいふを俟たないところである。ただその除名の当否を審査するに当つては申請人の主張するが如き単なる客観的妥当性の点からのみでは足りないものといふべきで矢張り労働組合と言ふ特殊社会の自主性をも充分考慮した客観的且具体的妥当性の有無が判断されなければならない。

よつてかかる見地に立つて本件除名処分の当否につき考へて見ると、申請人の前記スト条項不遵守の点についてはスト開始当初において二、三その違反行為が認められるだけでその後は之を改めて組合の統制を守つていること、辻田宅の件については前記認定のように前後不覚と迄は言へない迄も申請人はかなりの酩酊状態にあつたことが認められ、又之等が積極的に組合の統制を紊す目的をもつて為されたとは認められないこと、前記組合規約第八十三条によれば懲罰として除名の外に権利停止の制度をも認めていること等を綜合勘案し、申請人の前記行為により組合の蒙つた損失と除名処分の申請人に与へる影響とを比較検討すれば本件の場合その制裁として申請人を除名処分にするのは客観的に見ていささか苛酷に失するとの感を免れないが、他面組合員に制裁に該当する違反行為があつた場合これに如何なる制裁を科するかは組合が自主的に決定すべき事柄であることや、申請人の前記行為が被申請人組合の前記闘争態勢中のものであり而もその処分も右闘争中の組合により為されたものであること等をも考へ合せれば必ずしも右除名処分が著しく妥当性を欠き苛酷に過ぎるものとは認め難い。

よつて本件除名処分は一応有効と認むべきである。従つて其の無効を前提とする申請人の本件仮処分申請は理由がないからこれを却下し、また右申請に基いて当裁判所が昭和二十九年五月二十五日に為した仮処分決定は不当であるからこれを取消し、仮執行の点につき民事訴訟法第百九十六条、第七百五十六条の二、訴訟費用の負担につき同法第八十九条を適用して、主文の通り判決する。

(裁判官 山口民治 弥富春吉 大政正一)

【参考資料】

仮処分申請事件

(長崎地方佐世保支部昭和二九年(ヨ)第五〇号昭和二九年五月二五日決定)

申請人 山村次義

被申請人 潜龍礦労働組合

主文

申請人の被申請人潜龍礦労働組合の組合員である仮の地位を定むる。

被申請人は申請人に対し他の組合員と差別待遇をしてはならない。

(注、保証金三万円)

(長崎地方佐世保支部――裁判官 大政正一)

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